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ナノポア技術で塩基配列を素早く読み取る

皆さん、こんにちは!前回のAmeliPress2月号の記事はお読みいただけたでしょうか? 今回はAmeliPress3月号のナノポア技術について触れたいと思います。 近年注目されている夢の技術ですので、どうぞお楽しみください。

ナノポア技術で塩基配列を素早く読み取る

 ナノポアとは、薄膜に開けた数 nm(1m の10 億分の1程度)の小さな穴のことを言います。そのナノサイズ の穴であるナノポアにDNAを通し、その際のイオン電流の変化によって、塩基配列を読み出すことができます。DNAに含まれる4種類の塩基(A,T,G,C)はそれぞれ異なる体積を持つため、DNAがナノポアを通る際にブロックするイオンの電流量に生じる差を読み取ることで、塩基配列を決定することができるのです。このような塩基配列の解読にナノポアを利用するという技術が、近年ようやく実際の解析に用いることができるようになってきました。

 ナノポア DNA シーケンシングの最大の特徴はなんといってもその携帯性にあります。2012 年に Oxford Nanopore Technologies 社から製品化された NGS「MinION」は手のひらに乗る USB サイズのシーケンサーを実現しました。この高度な携帯性とリアルタイムでデータ解析できることから、空港の水際対策など現場での感染症を引き起こす病原菌の検出・同定や通常の研究室環境がない野外調査でのサンプル調査などに使用できます。さらに、NASA(米航空宇宙局)が宇宙ステーションで「MinION」を用いた居住区域の微生物 DNA シーケンスを行い、打ち上げの衝撃に耐えつつ微重力下でもシーケンスが行えることを示したこと(1)で注目を集めています。また、一分子シーケンサーという特徴を生かした de novo アセンブリによるゲノム配列決定も容易になるでしょう。これからシーケンスの精度が高まり、複雑な操作を必要としない簡易シーケンサーが普及すれば、様々な市場が創出される可能性があり、夢の「一家一台シーケンサー」が実現する日もそう遠くはないのかもしれないですね。

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図 ナノポア技術の多様な応用事例

出典:https://nanoporetech.com/applications

(1)https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/dna_sequencing/