涼しい日も増えてきて,秋っぽさが増してきましたね.
みなさま体調を崩さないようにご自愛くださいませ.
秋といえば,「実りの秋」ですね.
実りの秋ということで,2ヶ月連続となりますが,植物病理学ネタです.
今回はブリューゲルの絵と植物病理学に関しての雑学を書きたいと思います.
美術に関しては詳しくはないのですが,
ブリューゲルさんは中世ヨーロッパで活躍した画家で,絵画「バベルの塔」は見たことある人は多いのではないでしょうか.
宗教色のある絵も描いていますが,当時の人たちの暮らしぶりも多く題材として扱っています.
こちらのジャンルの絵画は「雪中の狩人」という絵画が有名かもしれません.
今回着目する絵は,「謝肉祭と四旬節の喧嘩」という絵画です.
(Wikipediaから拝借しました)
こちら,絵画の一部を抜粋したものですが,私の着目して欲しい点は一目瞭然かと思います.
脚が切断されている人びとが描かれています.
今回の話は,「なぜ脚が切断されているのか」と「植物病原菌」との関係についてです.
この脚が切断されている理由というのが,植物病原菌の一種の「麦角病菌(Claviceps purpurea)」によるものなんです!
大丈夫です!植物病原菌が人に直接感染して悪さをする例は今のところ報告されていないようです.
ちなみにこちら中央のイラストが麦角病菌の病徴で,ムギ類の穂に黒い角みたいな菌核を形成している絵が描かれています.(wikipediaより拝借しました)
この植物病原菌が「麦角アルカロイド」という化合物群(麦角病菌が生合成するアルカロイドの総称)を作り,これが脚の切断の原因なのではと言われています.
特に今回の注目するのは,この麦角アルカロイドの中でも「リゼルグ酸」と呼ばれる物質ですね.
ここでピン!とくる方もいらっしゃるかと思いますが,あの「LSD」の前駆物質ですね.
LSDとは,ざっくりいうと麻薬の一種ですね.
リゼルグ酸には強烈な血管収縮作用があり,大量に摂取すると末端組織に血液が供給されなくなり,末端部が壊死してしまうんですね.
つまり,この人たちはリゼルグ酸を摂取したことによる血管収縮のために四肢の先が壊死してしまったということです.
ここからは諸説あり(私の妄想も含まれ)ますので注意してください.
みなさんはどうしてそんなものを食べるんだ!と思われると思います.
僕も思います.
1. 麦角病菌に感染していた収穫物で作ったパンなどに混入していた.(当時のヨーロッパの気候は麦角病菌の生育しやすい気候だったとか...)
2. 宗教的な儀式で使用されていた.(勿論,幻覚作用もあり民俗的な行事に使われていたとか...)
などが考えられております.
絵画にこのような記録が残っているというのが面白いなあと思っていたので,
ブリューゲルの絵画と麦角アルカロイドについてご紹介させていただきました.