最近のPLoS Oneに載っていたmiRNA-Seqの論文をご紹介します。
Bansal A, et al.
Discovery and Validation of Barrett's Esophagus
MicroRNA Transcriptome by Next Generation Sequencing.
PLoS One. 2013;8(1):e54240.
Epub 2013 Jan 23. PubMed PMID: 23372692.
バレット食道(Barrett's esophagus)は
食道下部の粘膜が胃と同じ円柱上皮に置き換わった状態で、
食道がんの前駆病変の一つと考えられており、
胃食道逆流症(GERD)により引き起こされるそうです。
この論文では、バレット食道患者と胃食道逆流症患者の間で
以下の手順でmiRNAの発現を比較しています。
1. バレット食道患者 6名と胃食道逆流症患者 5名の
Total RNAのうち70bp未満のものをSOLiDでシーケンシング
(リード長35bp)
2. アダプタ除去後、15bp以上残ったものだけを、
miRBase最新版にbowtieでマッピング
3. precursor miRNA配列にマッピング(〜1ミスマッチ)、
mature miRNA配列にマッピング(オーバーラップ7bp〜)
4. miRNAにマップできなかったものを
fRNAdbのNon-coding RNA配列、hg19ゲノム配列、
大腸菌ゲノム配列にマッピング(〜3ミスマッチ)
5. miRNAとアノテートできたものについて、Bioconductorの
DESeqパッケージでリード数を正規化、発現レベルを比較
6. 解析結果をRT-PCRで検証
7. miRNAのターゲットを複数プログラム(*1)で予測し、
それぞれ上位5%だけに絞り、2つ以上のプログラムで予測された
遺伝子をターゲット候補として残す
*1:microT, miRanda, miRTarget, PicTar, PITA, RNA22, TargetScan
8. ターゲット候補遺伝子についてEGANを用いてKEGG Pathway解析
同じような発現傾向を示すいくつかのmiRNAが
同じ遺伝子をターゲットにしていることがわかったそうです。
miRNA-Seq解析の論文を定期的にチェックしているのですが、
Exome解析やRNA-Seq解析と異なり、
miRNA-Seq解析はまだ定番の仕組みができておらず、
論文ごとに手順やソフトウェアが異なるようです。
miRNA-Seq解析のご要望にお応えできるよう、
引き続き論文をチェックしていきたいと思います。
個人的な話ですが、アノテーションで使われているfRNAdbで
昔3年間ほどお仕事をさせていただいていたことがあります。
自分が関わったデータが最新の論文でも活用されていることが
とても嬉しかったです。