空間的遺伝子発現解析入門①

こんにちは、受託コンサルティングチームの hosor です。


アメリエフの受託解析は主要な空間的遺伝子発現解析プラットフォーム、Xenium、Visium 、Stereo-seq™、CosMx™等に対応しており、2025年には新技術 Trekker™ への対応も開始いたしました。 日進月歩で新しい技術が更新される空間的遺伝子発現解析は、現在非常に注目されている分野です。

そこで今回より、空間的遺伝子発現解析に関する連載記事を開始したいと思います。

本記事では、空間的遺伝子発現解析の基本的な概念から、ざっくりとしたプラットフォームの特徴までを解説していきます。

※ 本記事は、各技術の一般的なユースケースを基にしています。ただし、プラットフォームごとに例外やアップデートが多い世界なので、細かい特徴は必ずしもここでの説明通りではありません。"大まかなイメージ" として読んでいただければ幸いです。また、詳しい内容は弊社にお問い合わせください。

空間的遺伝子発現解析とは

空間的遺伝子発現解析(空間トランスクリプトーム解析)とは、「組織内の細胞が、どの場所で、どの遺伝子を、どれくらい発現しているか」を調べるための解析のことを指します。

従来の解析手法として、bulk RNA-seq 解析や、シングルセル RNA-seq 解析があります。

bulk RNA-seq 解析は、組織中の全ての細胞の遺伝子発現を平均化して測定する技術であるため、個々の細胞の多様性や、どの細胞が組織のどこに存在したかという情報は失われてしまいます。

また、シングルセル RNA-seq 解析は、個々の細胞に分離して 1 細胞ずつ遺伝子発現を測定する技術ですが、元の組織における細胞の位置関係は失われてしまいます。

空間的遺伝子発現解析では、上記 2 つの手法が失う位置情報を保持する点が最大の特徴です。

位置情報まで見ることで、がんをはじめとする疾患の深い理解に繋がることから、特に病理学の分野で注目を集めています。

プラットフォームの特徴

空間的遺伝子発現解析のプラットフォームは、技術的なアプローチに基づき、大きく 2 つに分類されます。

その 2 つとは、シーケンスベース (Sequencing-based, NGS-based) とイメージングベース (Imaging-based) であり、原理はおおまかに以下の通りです。

Rao, A. et al. Nature 596, 211–220 (2021). Fig.1

シーケンスベース (Sequencing-based, NGS-based)

原理

位置情報を示すバーコードがあらかじめスポット状に配置された特殊なスライドガラスを用います。

組織切片をスライドに乗せると、組織中の mRNA が放出され、直下のスポットにあるバーコード付き分子に捕捉されます。

その後、mRNA とバーコードをまとめて回収し、次世代シーケンサ (NGS) で配列を解読します。

長所

原理上、ほぼ全ての mRNA を検出できるため、探索的な解析が可能です。

短所

解像度はバーコードが配置されているスポットのサイズや間隔に依存するため、個々の細胞を区別することができない場合があります。

代表的なプラットフォーム
  • Visium (10x Genomics 社)
  • Visium HD (10x Genomics 社)
  • Stereo-seq™ (MGI 社)
解析例 (Visium)

クラスタリング結果を空間座標に反映させたプロット

着目遺伝子の発現量を空間座標に反映させたプロット

図は以下より抜粋しました。

Analysis, visualization, and integration of spatial datasets with Seurat • Seurat

イメージングベース (Imaging-based)

原理

あらかじめ標的とする数百~数千種類の遺伝子を決め、それらに特異的に結合する蛍光プローブを設計します。

in situ hybridization 法に基づき、組織切片にこのプローブを直接反応させ、高解像度の顕微鏡で撮影します。

どの色の蛍光が、細胞のどの位置で検出されるかを画像解析することで、細胞内の mRNA 分子の位置と発現量を特定します。

長所

1 細胞単位、さらには細胞内のどこに mRNA 分子が存在するかといったサブセルラーレベルでの解析が可能です。

短所

あらかじめ決まった遺伝子しか検出できないため、網羅的な探索には向いていません。

代表的なプラットフォーム
  • Xenium In Situ (10x Genomics 社)
  • CosMx™ SMI (Bruker 社)
解析例 (CosMx™)

細胞種同定の結果を空間座標に反映させたプロット

着目転写産物の局在を空間座標に反映させたプロット

図は以下より抜粋しました。

Analysis of Image-based Spatial Data in Seurat • Seurat

まとめ

ここまで、遺伝子発現を組織内の位置情報と合わせて解析する「空間的遺伝子発現解析」の基本を解説しました。

  • 網羅性を重視するなら「シーケンスベース」

  • 解像度を重視するなら「イメージングベース」

研究目的に応じて、最適なアプローチを選択することが重要です。

近年では、シングルセル解析に空間情報を付与することを可能にした Trekker™ という技術も登場しています。

第2回では、個別のプラットフォームの特徴について解説する予定ですので、ご期待ください。

空間的遺伝子発現解析でお困りごとがございましたら、アメリエフにお気軽にお問い合わせください!

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